イタリアオーガニック事情 | オリーブオイルソムリエ&マスターオーガニックコーディネーターの「ビオイッシモ」

イタリアオーガニック事情



イタリアオーガニック地図

NO1多様性と地域制に富んだ国、イタリア

イタリアはアルプスから地中海に伸びた長靴状のイタリア半島と、シチリア島をはじめとする約90の島からなっています。総面積は日本の約80%で、気候は南北で異なり、南部は温暖な地中海性気候から硬質小麦、オリーブ、柑橘類等の地中海型農業が行われているのに対し、北部は地中海性気候が弱まり、夏季も降雨があるので小麦、酪農、稲作等が中心になっています。このように地形が細長いので気候の上で多様性に富み、強い地域性があるのが特徴です。



麦畑

NO2イタリアオーガニックの歴史

イタリアではロンバルディア州やエミリア・ロマーニャ州のパダーナ平原の穀倉地帯を中心に、化学肥料・農薬を投入し、機械化された近代農業が推進されてきましたが、1960年代初頭に有機農法による農業が誕生しました。実際に世の中に認められてきたのは1990年代にEEC(欧州経済共同体)規則が定められ、減農薬農業・有機農業へ転換する農家に補助金が出るようになってからです。その結果、イタリア国内、海外ともにイタリア産オーガニックの消費者が増えて品質も向上しました。更にオーガニックであることを証明する認証制度も整備されることでますます消費が拡大しました。



麦畑

NO3ヨーロッパ有数の有機農業国イタリア

ヨーロッパは世界でも最も有機農業が盛んな地域で、中でもイタリアはヨーロッパ有数の有機農業国です。生産者数ではEU圏内で第1位、総耕作面積では第2位、オーガニック農地割合は約9%(2009年)となっています。有機農業はシチリア、サルデニアの島嶼部とプーリア、カラーブリアの南部、エミリア・ロマーニャ、ピエモンテ、ラツィオ、トスカーナの南部から北部に集中しています。農作物別に有機栽培面積を見ると飼料作物、牧草、穀物で全有機栽培面積の約70%を占めています。生産された有機食品・農産物のうち約30%が輸出(主にヨーロッパ)されています。


NO3なぜイタリアでオーガニックが盛んなのか?


スローフードスローフード

NO1スローフード運動について

有機農業の先進国イタリアで誕生したスローフード運動の高まりが、オーガニック素材へ関心を持つきっかけの一つになっていると考えられます。

市民が反対したマクドナルドのローマ進出

1986年にローマの観光名所スペイン広場にマクドナルドが進出しました。ローマ市民はイタリアの食文化がマクドナルドに代表されるファーストフードにとって代わるのではないかという危惧を感じ、マクドナルドの進出反対運動にまで発展しました。

スローフード運動とは?

スペイン広場にマクドナルドが進出したその年、イタリア最大の自動車メーカーフィアット社があるイタリア北部ピエモンテ州トリノ市の南約60km、フランスとの国境に近いクーネオ県ブラでスローフード協会が誕生しました。スローフード運動とはその土地の伝統的な食文化や食材を大切にする活動であり、日本を含めて世界中に広がって行きました。スローフードがイタリアで生まれた背景には1960年代に取り組みを開始した有機農業が、市民の食への関心に影響を与えていたことも大きいと思われます。スローフード運動は、1960年代に食の分野で活躍したカルロ・ペトリーニが食文化雑誌「ゴーラ」を編集し、イタリア余暇・文化協会(アルチ)という団体の一部門「アルチ・ゴーラ」なる美食の会を組織したのがはじまりとされています。アルチは120万人以上の会員を擁する草の根的なイタリアの文化復興運動組織であり、スローフードの理念と密接な関わりを持っています。

スローフードの理念

カルロ・ペトリーニの唱えるスローフードの理念は、フランス革命時代に活躍したフランスの政治家で、美食家でもあったジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの著書「美味礼賛」の影響を受けています。1989年に「人は喜ぶことに権利を持っている」というコンセプトを発表し、同年パリで開かれた国際スローフード協会設立大会でスローフード宣言をします。美食とは何かという問いかけから、伝統の食事、素朴でしっかりとした食材、有機農業、健康によいものに関心が向かうようになり、一挙に人の注目を惹くようになってきました。現在、世界中に8万人以上の会員を擁しています。1996年のスローフード法令には、具体的な活動における3つの指針が示されています。

1.守る:消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワインを守る。
2.教える:子供たちを含め、消費者に味の教育を進める。
3.支える:質のよい素材を提供する小生産者を守る。



野菜

NO2オーガニックフードの品質保証制度の確立

イタリアでも1960年代初め頃は化学肥料を大量に使用した近代化農業が推し進められていましたが、その陰で秘かに生まれたのが有機農業でした。

先駆者たちが有機農業に取り組んだ結果、1980年代には生産されたパスタ、小麦粉、パン、保存食品、ワイン、オイル、野菜、果物、チーズ、牛乳、ジュースなどがイタリア北部、中部の店舗、消費者協同組合に納入されるようになり、ヨーロッパ各国への輸出も始まりました。しかし、当時有機食品であることを認証する制度が十分に整備されておらず、有機農業に理解がなかった監督当局は有機食品をたびたび押収しました。

その後、EUの食品安全基準の強化と有機農家支援により、全国各地に生産者組合が増え、認証機関も増え、1990年代に入ってから現在のような有機認証制度が確立されました。
イタリアに認証機関がたくさんあるのは、有機農業の取り組みがかつて別々の農業団体ごとに振興され、全国的な生産者団体も林立しているという背景があります。



田園オーガニック1田園オーガニック2田園オーガニック2

NO3アグリツーズモ

「田園バカンス」という新しい過ごし方

広大な農地が広がるトスカーナ州。美しい小さな農村へ出かけ、地元で採れた素材や加工品を頂き、夜は農家の宿泊施設に泊まり、翌朝は朝食前に朝もやの中を気ままに散歩して贅沢な時間を過ごす・・・。近年、イタリアの農村で「田園バカンス」を楽しむイタリア都市圏に住む人や、外国人旅行者が増えています。
農村で農業と観光を結び付けることで地域に新しい世界を開拓するという理念のもと農村観光(アグリツーリズモ)が提唱され、トスカーナ州のシモーネ侯爵は1965年イタリア・ローマに若手職員13人と共にアグリツーリスト協会を設立しました。トスカーナ州は今でこそイタリアでも有数の農業州としてキャンティをはじめとしたワイン、オリーブ、小麦などの産地ですが、当時は貧しく、同じ州の都市フィレンツェには観光客が溢れていたものの、農村では過疎が進み、地域経済は衰退していました。

アグリツーリズモとは?

ヨーロッパでは農村で休暇を過ごすことはアグリツーリズムと呼ばれ、イタリアをはじめとしてオーストリア、スイス、ドイツ、イギリス、フランスで展開されてきました。
イタリアは遅れてアグリツーリズムに参入したのでイタリアの特色を確立する必要がありました。そこで考えられたのが地方色豊かな美食でした。
アグリツーリスト協会の若手職員は、当初この活動に携わった際に、「本業である農業をないがしろにし、本当に来るか判らない旅行者をあてにして農家の母屋を改造して宿泊施設を建造しているとは何事か。」と周りから非難されたそうです。逆風の中、この活動を継続し、21世紀に入ってからアグリツーリズモは急増しました。その結果、アグリツーリズモはイタリア農家の所得を改善し、農村の文化、社会的役割を大きく向上させ、豊かな食文化に磨きがかかりました。

現在のアグリツーリズモ

近年、アグリツーリズモでは一番の柱である食の品質に力を入れています。
これはスローフードの動きとも連動しており、イタリアでは地域の伝統的作物を少量ながら多様に有機栽培するというスタイルの農業に変わってきました。その結果、もともと地域色豊かなイタリア料理に、更に地元のオーガニック素材を使った地域の伝統メニューが増えてきたようです。
イタリアでオーガニックが盛んになってきた背景には美食であることを特色とするアグリツーリズムの影響も大きいのではと考えられます。